好きになっちゃ、いけない。〜イケメン主は家政婦兼最強スパイちゃんを溺愛したい〜

「部外者のくせに口挟んでくるんじゃねぇよ。そもそも誰なんだよお前」
「え〜、しつこーい。しょうがないなぁ、教えてあげる。俺、沙雪茜だよ」
 思っていることが全く読めない笑顔でそう言った茜さま。
 茜さまの言葉を聞いたとたん、後ろにいた男の人の一人がサッと顔を青ざめた。
 その人が、素早く茜さまにキレそうになっている人へ耳打ちする。
「やばいよ、この人株式会社sayukiの社長の息子だって。俺の親父、その会社で働いてるんだよっ……」
 小さな声で言ってるつもりなんだろうけど、聞こえてるんだよなぁ……。
「はぁ? ちょ、お前……」
「いーから! もう行こうって」
 茜さまのことを知ってるらしい人が、他の二人の背中を押して去っていった。
 よ、よかった……。
 安堵の息をつく。茜さまが「大丈夫?」と聞いてきたので、こくこくと頷いた。
「ありがとうございましたっ……」
 お礼を言うと、茜さまは驚いたように目を瞬いて、私に顔を近づけて見る。
 な、何かな……?