好きになっちゃ、いけない。〜イケメン主は家政婦兼最強スパイちゃんを溺愛したい〜

 お世辞でもそう言ってくれる陽宙くん……いい人だ!
「ありがとう」
 笑いかけると、陽宙くんは焦ったように「僕もう行くね!」と私を通り過ぎて行った。
 私は後ろ姿の陽宙くんに手を振ったあと、玄さんを見つけようと歩き出す。
 さすがにもう行ったかな……?
 きょろきょろと探していると、一台の大きな黒い車の近くにいる玄さんを見つけた。
 い、いたっ……!
 あれ……でも車だから、どうやって追いかけよう……。
 走ってもさすがに、車には負けると思うし……。
 車の近くの茂みに隠れながら、私はどこに行くかのヒントが聞こえないかなと耳をすませる。
「どうして俺が、そんなとこに行かなければいけない」
「玄兄は人がたくさん行くところをお勉強しないとねぇ。こんなんじゃ彼女できてもデート楽しくないって思われちゃうよ〜」
「興味ない。恋はしない」
「はいは〜い、あそこは屋上も綺麗だから玄兄もきっと気に入るよ」
「ちょ、おいっ……」