部屋で全身が映る鏡を見て、思わずため息をつく。
 わぁ……これは、誰も私だってことわからないだろうな……。
 薄い金色の髪に、水色の瞳。着ている服はひらっひらのワンピースで、普段の私が絶対着ない系統のもの。
 数分前、波原さんに尾行をしろと言われて、私はしぶしぶ了承した。
 尾行をするには欠かせないもの──それは、『変装』。
 私がつけているのはウィッグに、カラーコンタクト。この服も帽子も、全部私がスパイになるために波原さんが買ってくれた。
 まさか、本当に使う日が来るとは……。
 一応お財布とスマホが入ったバッグを持ち、部屋を出て玄さんを探す。
 もう行っちゃったかな……。いや、行っていてほしい……尾行ができないという理由になるから。
 正直、尾行なんてやりたくないよ〜……。
「え……誰?」
 歩いていたら、陽宙くんに見られてしまった。
 あ……私、もしかしなくても不審者に見えるよな……!?
「あ、えっと、その違くて……私、その、柚希です」
 あわあわとしながら本当のことを言うと、陽宙くんは目を見開いた。