よかった、ちゃんと逃げきれたんだ……!
 ほっと息をつくと同時、玄さんの言葉が繰り返し頭の中で再生された。
『俺は──株式会社sayukiの社長には、ならない』
 これって……跡取りにはならないってこと、だよね。
 そんな……どうしてだろう。何か、理由があるのかな……。
 中庭で一人考える私を、月だけが照らしていた。