「それは、なんで?」
「先輩だから、です」
「ならいい」
 さん付けが許されて、ほっと息をつく。
 玄さま──玄さんはなんでそんなに、主従関係が嫌いなのかな……。
 気になったけれど、あまり奥まで踏み込んじゃいけないなと思い詮索するのをやめた。
「じゃあ、失礼します」
「あぁ」
 今度こそ呼び止められることもなく、私は玄さまの部屋を後にした。
 ドアを閉めて、ふぅと息をつく。すると「ゆーずっきちゃん」と声をかけられた。
「陽宙くん……どうしたの?」
「玄さまに、あれ言われたでしょ〜」
 あ、あれって何……?
 陽宙くんは、にっと笑った。
「呼び捨てのこと」