朝日が流れ込んでくる廊下を歩く。
 一つのドアの前について、私は立ち止まった。
 ついさっき、杏さんにまた玄さまを起こしてきてと言われたの。
 そっとドアを開けて、中を見る。玄さまは昨日と同じように眠っていた。
 さすがに、昨日のことみたいなことはもう起こらないよね……?
 警戒しながらそろそろと近づく。「どうしても起きなかったら叩き起してもいいんだよ、玄さま怒らないから大丈夫」という陽宙くんの言葉を思い出した。
 主を叩き起すって……よく怒られないな……。
「玄さま。朝です、起きてください」
 声をかけてみる。数秒たち、やっぱりこれでは起きないか〜と思ったところで、「ん……」と玄さまがうっすらと目を開けた。
 あ……お、起きたっ!
「おはようございますっ」
「……柚希か。おはよう」
 まだ眠そうな、掠れた声。
 えっと……玄さま起きたから、これでこのお仕事完了だよねっ!
 部屋を去ろうと思い、頭を下げかける。……けど、伝えたいことがあったなと思い出し、口を開いた。