全部の授業が終わり、私はイスから立ち上がりいつも通り帰ろうとしている翔くんをあわてて呼び止めた。
「翔くん。合唱祭の実行委員、今からだよ」
「あ、そっか! やべ、すっかり忘れてた。柚希、教えてくれてありがと」
「ううん、私がただ一緒に行きたくて呼び止めただけだから。一緒に行ってもいいかな……?」
 そう聞くと、翔くんはぶんぶんとすごい勢いで首を縦に降ってくれた。
「もちろん!」
 よかった……断られなくて。いや、でも翔くんは優しいから断らないか……。
 ほっとしながら、翔くんの隣に並び歩き出す。
「どこ集合だっけ」
「えっとね、確か先生は三階の空き教室だって言って──」
「柚希ちゃ〜ん!!」
 私の言葉を遮った大声に、私たちは後ろを向く。
 この声は……紗奈ちゃん?
 すると思った通り、紗奈ちゃんがいた。
「あ……紗奈ちゃん。ごめんね、今日は一緒に帰れなくて……」