主に恋しちゃダメなルールがあるなら、もしかしてこれもアウト……?
 いや、恋なんてちっともしてないけども、玄さまのせいだとしてもっ。
 家政婦と主がこんな状態になっちゃうなんて……それこそクビ間違いなしだよな……!?
 う、うわぁぁぁ、初日からクビは勘弁……!
「ん……」
 血の気が引く私。すると後ろで、玄さまが声を上げた。
 もしかして、起きた……?
 い、今更すぎるっ……! もっと早く起きてください玄さま……!
 心の中で怒りの声をあげる私を、玄さまはやっと見たのか「は?」と呆然と呟く。
「誰、お前……なにして──」
 玄さまが手の力を緩めた瞬間、私は玄さまの言葉を最後まで聞かずベッドを降りドアへと足を走らせた。
 もう手遅れだと思うけど、逃走しよう……!
 ドアを開け、廊下へ出る。
「すみませんでした〜!」
 勝手に部屋に入ってしまってごめんなさいっ……でも、一応仕事は全うしました!
 後ろから玄さまの声が聞こえたけれど、私は構わずに足を動かし続けたのでした。