私が倒れたところは、白いシーツの上。そして後ろから、お腹の方にぎゅっと手が回されている。
 ……こ、これ、もしかして。
 信じたくないけど、現実じゃないと思いたいけど。
 玄さまに、後ろから抱きしめられてる……!?
 う、嘘っ……。
 まさかの事態に、あわあわと焦る。
 陽宙くんが気をつけてって言ってたけど、こういう意味だったのっ……?
 私はあわててもぞもぞと動き、早くこの状況から脱出しようとする。けれど、回されている手に力が込められていて出られない。
 玄さま、誰かと私を間違えてる……? それとも、抱き枕とかとですかっ……?
 まぁどんな理由があったとしても、こんな地味女子を寝ぼけながら抱きしめてしまったことは不本意な気持ちしかないはずっ……!
「玄さま。玄さま、その、私、雨雅柚希ですっ……」
 勇気を出して話しかけるけれど、玄さまが起きる気配はさっきと同じようにない。
 ほ、本当にどうしよう……。
 力づくで脱出する? でもそれで怪我でもさせたらクビ間違いなし……。
 そこまで考えて、ハッとした。