部屋に踏み込めずに廊下から声をかけるけれど、返事は返ってこない。
 やっぱり、眠っているか……。
 それなら仕方ないと、部屋にあがらせてもらう。
 恐る恐る玄さまの近くに行くけれど、玄さまは私に気づきそうもない。
 瞑っているまぶた。さらさらな髪。整った顔立ち。
 まつ毛、長い……。初めて会った時も思ったけれど、すごい綺麗な人だ……。
 思わずまじまじと見つめてしまう。すると玄さまが「ん……」と少し顔を歪めて、私はハッとした。
 見とれてる場合じゃないっ……仕事しなきゃ……!
「玄さま……? 朝ですよー……」
 近くでそう呼びかけるけれど、玄さまはさっき顔を歪めたのみ反応がない。
 何回かそれを繰り返したけれど、同じ結果だった。
 どうしよう……全然起きない!
 もうちょっと声を大きくしてみようかな……?
「玄さま。玄さま〜……! 朝です! 起きてください……!」
 結構声を大きくしたけれど、見事に反応なし。