数秒たっても殴られなかった私は、恐る恐る頭をあげた。
すると、最初に見えたのは波原さん……ではなく、誰かの背中。
「俺の婚約者に触らないでくれる?」
……っ、え、玄さん……!?
なんで……誰にも言わないで寮を出てきたのに……!
「……君は、沙雪玄か?」
「ご名答。俺の婚約者になに手出してんの? 社長さんよ」
きっとあの鋭い瞳で見つめられたであろう波原さんはぐっと押し黙る。
けれど、すぐに波原さんは開き直った。
「はっ、何が婚約者だ。こいつは俺が育てたスパイだ。裏切られてるんだよ、沙雪玄」
「知ってる」
「はっ………!?」
「それに、今の──」
玄さんは、スマホを波原さんに見せた。
「撮ってたんだけど」
すると、最初に見えたのは波原さん……ではなく、誰かの背中。
「俺の婚約者に触らないでくれる?」
……っ、え、玄さん……!?
なんで……誰にも言わないで寮を出てきたのに……!
「……君は、沙雪玄か?」
「ご名答。俺の婚約者になに手出してんの? 社長さんよ」
きっとあの鋭い瞳で見つめられたであろう波原さんはぐっと押し黙る。
けれど、すぐに波原さんは開き直った。
「はっ、何が婚約者だ。こいつは俺が育てたスパイだ。裏切られてるんだよ、沙雪玄」
「知ってる」
「はっ………!?」
「それに、今の──」
玄さんは、スマホを波原さんに見せた。
「撮ってたんだけど」

