前半は騒がしかったけど、まぁ平和に終わった合唱祭実行委員の仕事。
「柚希、一緒に帰らないか?」
玄さんが、そう誘ってくれた。
「嬉しいけど……いいんですか?」
「もちろん」
玄さんがいいなら……と私は甘えさせてもらった。
すごく高級そうな黒い車に、恐る恐る乗る。
前に運転手さん、後ろに玄さんと私という席順だ。
「では、出発いたします」
「あ、ありがとうございますっ……」
私たちがシートベルトをちゃんとしたのを運転手さんは確認してから、車は出発した。
窓の外の景色を眺めながら、私はふと心配になる。
実はこのあと、奏さまと話し合いに行くんだ。玄さんもついてきてくれるらしいから、少しは安心なんだけど、やっぱり不安……。
そう思っていると、玄さんが「柚希」と私の名前を呼んで、私は視線を移動させる。

