いきなり玄さんに抱きしめられて、私は驚く。
 な、何が起きてるのっ……?
 玄さんの顔を見ようとする。けれど、動けないぐらい強く抱きしめられていて、見えなかった。
「や、やめてください……」
 玄さんの体を手で押して、どうにか抜け出そうとする。
 だって……こんなの、玄さんが私のこと好きとか、すごい勘違いしちゃいそうで。
 でも、私が株式会社namihara側って知って……いくら玄さんでも、幻滅すると思う。
 なら、後で幻滅して突き放すぐらいなら……こんな、優しくしないで欲しい……。
「柚希」
 玄さんは私を解放してくれて、今度は正面からじっと見つめられた。
「……前あげた指輪、あるか?」
「え、あ……はい」
 ポケットに入ってる小物入れから、指輪を取り出す。
 これ……返せって言われちゃうのかな……。
 胸が痛みながら恐る恐る手渡すと──玄さんは急に私に向かってひざまずいた。