そんな俺の気持ちに気づいたのか、陽宙は困ったように微笑んだ。
「柚希ちゃんがよかったですか? ……まぁ、わかりますけども。でも、柚希ちゃんは茜さま専属になってしまったので」
「……わかってる」
「わかってるならいいです。じゃ、またね玄お兄ちゃん!」
 陽宙は俺の部屋から出ていった。俺は着替えたり身だしなみを整えたあと、イスに座って息をつく。
 陽宙が嫌なんじゃない。というか、あいつのことは好きだ。……ただ、柚希が特別なだけで……。
 そこまで考えて、俺は何考えてるんだと首を横に振った。
 特別なんて思うとか……気持ち悪いな……。
 三日前、柚希を泣かせてしまった。そのことは、俺の心に大きく傷をつくっていた。
 だから、柚希は俺ともう会いたくないだろうと目をそらしているが……柚希は俺に頑張って声をかけようとしてくれているらしく、わざと目をそらしたあとの柚希の顔がどうしても忘れられない。
 せっかく声をかけてくれるなら話してみるか……? でも、それで柚希が無理をしてるなら……。
「玄兄!」
 考えこんでいると、茜が焦った様子で俺の部屋に来た。
 こんなに焦ってる茜は珍しい。どうしたんだと近よると、茜は俺をまっすぐと見た。
「柚希ちゃんと、もう会えないかもしれない」