一室の部屋へ連れていかれる。ドアが閉まって二人だけになり、奏さまは私を見た。
「一応問う。君は、株式会社namiharaからのスパイなのか?」
 ストレートに訊いてくる奏さま。
 もう……誤魔化せないのはわかってる。
「……はい」
 かすれた声で答えた。私は俯く。
 奏さまは、はぁと息をついた。
「でも、私と直接話すのは初めてだろう? ならば──ターゲットは、玄か?」
「……っ」
「玄を、利用したのか?」
 バッと顔をあげる。奏さまは、鋭い瞳で私を見ていた。その瞳は、一番最初に玄さんと会った時の瞳と重なる。
「違っ……」
 違う、と言いたい。言い切りたい。
 だけど……全然違くない。本当にその通りだ。
 私は──玄さんを利用した。