「そっかー、玄兄がねぇ……」
「はい……」
 また玄さんに謝れないまま一日時間がすぎて、私は茜さまの部屋でため息をついた。
 私が玄さんのことを相談──もちろんスパイのことや玄さんの夢のことは内緒にして──すると、茜さまは真剣に聞いてくれた。
「ん〜、これは俺のせいでもあるからなぁ……力になりたいけど、どうすればいいのか……」
「そんな、茜さまのせいじゃないです……! 私があんなことを言っちゃったから……」
 どうして、あんな突き放すような言い方しちゃったんだろう……。
 できるならば、過去に戻ってやり直したい……。
 肩を落としていると、茜さまが軽く頭を撫でてくれた。
 優しい……。
「柚希ちゃんが声をかけようとすると、目をそらされちゃうんだよね?」
「そうなんです……」
 昨日の朝の時は半信半疑だったけれど、放課後の合唱祭実行委員の時に声をかけてみたら目をそらされちゃったから、玄さんは私をさけているんだと確信した。
 茜さまも戸惑っているのを見て、すごく珍しいことなんだなとショックを受けた。
 だって、それぐらい私が玄さんを怒らせちゃったってことで……。