早速眠そうな玄さんを廊下で見つけて、私は駆け寄ろうとする。
「玄さ──」
 けれど、玄さんが私の方を見たとたん、ふっとそらされた。
 ……え?
 今、目合ったよね……?
 気のせいかもしれないけど、でも、玄さんがわざと私から目をそらしている気がして。
 まだ、『気がする』だけだ。
 はっきりさせるには確かめればいい。
 だけど、これでちゃんと声をかけて……無視されてしまったら……?
 きっと、私はしばらく立ち直れない。
 私はあげていた顔を俯かせる。
 そして、会釈してなんてこともないように玄さんの横を通り過ぎた。
 パタパタと、私の足音だけが響く。
 ……もしかして。