「あれー、柚希ちゃんだ」
「桜水くん」
あっという間に夜になって、お風呂あがり。月を見ながら中庭で涼んでいると、桜水くんと会った。
ちなみに、沙雪家の家政婦や家政夫は全寮制で、衣食住にまつわるものはだいたい沙雪家が用意してくれている。
特に私たち中学生はまだバイトなどができない歳だから、お金は貰わないで、その代わりに……って感じらしい。
今日杏さんが案内してくれたのは主さまたちの家だけじゃなくて、ここの寮もだった。
寮には私と杏さん、桜水くんと春雷くんしかいないけれど、さすが沙雪家。すごく綺麗で豪華なんだ。
今座っているベンチも彫刻が掘られている白色のもので、すごくお値段が高そう。
桜水くんは、私の隣にぽすっと座る。
そして綺麗な水色に輝く瞳で、私の顔を覗き込んだ。
「柚希ちゃん、玄さまにはもう会った〜?」
「うん。会ったよ」
「どう思った?」
え……なんでそんなことを訊くんだろう。
私は不思議に思いながらも、思考をめぐらせる。

