ドアをノックすると、中から「どうぞ」と声が聞こえてきて、私は遠慮がちにドアを開ける。
 茜さまは、ベッドに座って本を読んでいた。肩まである黄色の髪は無造作に跳ねていて、服は着崩した着物。無駄に色気がある。
 燃えている炎のような色の瞳が私をとらえる。茜さまはまるで私が来ることがわかっていたように微笑んだ。
「おはよう」
「お、おはようございます……」
 茜さまはパタンと本を閉じると、おいでとでも言うように手をひらひらさせる。私は警戒しながら恐る恐る近づいた。
「あはは、そんな警戒しなくて大丈夫だって。なーんもしないよ?」
「……」
「それとも、襲ってほしいのかな?」
「……っ、からかうのはやめてください!」
 怒っても、茜さまは「ごめんごめん」と言いながらも笑みを絶やさない。
 本当に、何を思ってるかわからない人だな……。
「……どういうおつもりで?」
「ん?」
「なぜ、私を茜さま専属にしたのですか」