「さーて、今日はこれを作りまーす!」
 エプロンをつけた陽宙くんは、どどん! とレシピの書いてあるスマホを調理場のテーブルの真ん中におく。
 土曜日。今日は、陽宙くんを先生に春雷くんと私、三人でお菓子作りをするんだ!
「これ……よもぎ餅?」
 そのレシピは、よもぎなどの草を練りこんだお餅・よもぎ餅を作るためのやつだった。
 わ、私てっきり、ケーキとかクッキーを予想してたんだけど……洋菓子でもなかったっ!
「しぶ」
「こら〜、渋いとか言わなーい。めっちゃおいしいし、茜さまのリクエストでもあるんだよ!」
 春雷くんの言葉に頬をふくらませた陽宙くんが出した名前に、私はびくっと肩を揺らす。
 茜さま……その名前を聞くと、昨日のことを思い出す。あれ、絶対スパイじゃないかってあやしまれてるよな……。
「はーい、では今から作りましょう! 久しぶりに和菓子に挑戦するから、腕がなるね〜」
 きっと暗い顔になってたでだろう私は、ハッとし陽宙くんの言葉に頷いた。
 今は、お菓子作りに集中しよう……!
「陽宙く──陽宙先生、よろしくお願いします!」
「まっかせて!」