ドキドキと心臓が脈打つ。どうしよう。もう、誤魔化せない?
「まぁ、どうでもいっか」
「え?」
 茜さまが言った言葉に、私は目を見開いた。
 どうでもいいかって、なに? 家政婦が株式会社namihara側かもしれないなんて、重要なことだよね……?
 茜さまは、ふにゃっと笑った。
「ねぇねぇ柚希ちゃん、家政婦の仕事、慣れた?」
「え? は、はい」
「よかった〜。なんか悩むことがあったら、俺に相談してね! そうだ、杏も、陽宙も咲地も優しいでしょ〜」
「あ、えっと、はい。すごく優しいです」
 普通の話題に切り替わって、私は戸惑いを隠せない。
 茜さまって、本当に思ってることが読めないな……。
 そんな会話をしているうちに、茜さまの部屋の前へついた。
 茜さまは、「ありがとう」と笑い私の肩から手を離す。
 そういえば、途中から自力で歩けてたし……もしかして、足がしびれたというのは演技だったのではと疑ってしまう。