ふぅと、息をつきながら茜さまは私の肩に手を置く。
「大丈夫ですか? どこまで行きますか?」
「んー、俺の部屋までお願い。ありがとー、柚希ちゃん」
「いえ、これも家政婦の仕事なので、当然のことです」
「あ〜……そのことなんだけどね」
 茜さまは、私の顔を覗き込む。突然のことで、私は驚いた。
 どうしたのだろう……?
 きょとんと見つめる。茜さまはそんな私を見つめてから、口を開いた。
「柚希ちゃんが、株式会社namihara側ってホント?」
 ……っ!
 心の中で驚く。でも、表情に出したらダメだ。あとで誤魔化せなくなっちゃうから。
 やっぱり、さっきの電話でバレた……?
「まさか。私が株式会社sayukiのライバル、株式会社namihara側? そんなことあるわけないじゃないですか」
 私はそう言い笑う。大丈夫。ちゃんと笑えてるはず。
 それなのに、茜さまは「ふーん」と言いながらも笑い返してくれない。