他の生徒は帰り、静まっている学校。その中のひとつの空き教室だけが、ガヤガヤとしていた。
「翔、そこはもっとハキハキと言った方がいいかも！」
「はい、わかりました先輩！」
　合唱祭実行委員の活動が始まってからもうあっという間に三週間がたち、台本もできてきたのか翔くんたち司会者はバタバタとしていた。
　そして、雑用係の私も、大変そうだなぁと司会者を眺めている場合ではない。
「雨雅さん、ちょっと台本で追加のページがあるから、このページだけ全員分プリントしてきてくれない？」
「はいっ、了解です！」
　台本係の先輩にお願いされて、私は台本を受け取る。
　するとそれを近くで見ていた同じ雑用係、兼、実行委員長さんが私に声をかけてくれた。
「それ、僕も行こ──」
「実行委員長は周りをまとめたりと忙しいだろ。俺が行きます」
　実行委員長さんの言葉を遮ったのは、玄さん。
　実行委員長さんは「玄くんなら問題ないね」と引き下がった。
「玄さん、実行委員長さんも、ありがとうございます」
「柚希さん、モテてるね〜」