好きになっちゃ、いけない。〜イケメン主は家政婦兼最強スパイちゃんを溺愛したい〜

 玄さんが目を見開く。私は言葉を続かせた。
「私が役に立つかはわからないですけど……私、玄さんのこと応援したいんです……! 今の話、その……すごい、心に刺さったので……」
 まじまじと玄さんに見つめられ、私はどんどん声が小さくなる。
 う……なんか、恥ずかしくなってきた。俺は一人で生きていくとか、そうやって断られないかな?
 そもそも、私そんな役に立たないし、必要ないかも……。
「あの、嫌だったら遠慮せず断ってくだ──」
 さい、と締めくくった言葉の最後は、すごくかすれた弱い声になった。
 ──玄さんが、なぜかすごく泣きそうな顔をしていたから。
 どうしてそう思ったのかはわからない。涙目にもなってないし、前と同じ表情、立ち姿。けれど私には、私を真正面から見つめるその瞳がすごく揺れているように見えた。
「玄、さん……?」
 名前を呼ぶと、玄さんはハッとしたようにいつもの表情に戻る。
 な、なんだったんだろう……。
 不思議に思っていると玄さんは、ゆっくりと私に手を差し出した。
「……ありがとう」
 こ……これっ、いいってことかなっ……!