かさり、と乾いた音を立てて開かれたもの、それは15歳の僕には、全く無縁のもの。

 THE・婚姻届け。

 こんな紙切れ一枚で結婚出来ちゃうのかあ。ふむふむ。

 って、感心してる場合か、僕っ!

 婚姻届けって何!?
 つうか、諸々問題がありすぎでしょ!
 法的、倫理的に問題山積みだよっ!!

 速記さんは、冷静を極めた顔つきで婚姻届けを僕の方に向けて床に置いた。

「大丈夫よ。達筆くんが18歳になってから提出するから」

 秋空のスライドが巫女さんの背後に映し出されたかと錯覚するほど、晴れやかな笑顔でそう言った。

 大丈夫って!! 「18歳になってから飲酒するから」ってくらい、法律が許さないですって!!

「ちょ、み、み、そっ、そっ」

 ちょっと、巫女さん、速記さん、何考えてるんですか、と言いたかった僕の唇は、パニックのあまり上手く動いてはくれなかった。

「ふふ、達筆君って意外とベタなのね。『ずっと僕に味噌汁を作ってください』なんてプロポーズ。
でも、嬉しいわ」

 ちっがぁぁぁうっ!!
 何、自分なりに解釈しちゃってるんですか!?
 しかも、かなり自分に都合よく!!

 ……その耳、殿並ですよ? いいんですか?