とんだハプニング乗り越え、ついに書き終えたその恋文をくるくると巻きながら折り、表紙にその旨をしるし、筆をおいた。

「み、巫女さん!! これ――」

 ドス。

 恋文を高々と掲げ、巫女さんに駆け寄ろうとしたその時、わき腹に強い衝撃が走った。

 え? また落ち武者?

「あら、達筆君、どうしてそんなに矢がささっているの?」

 スローモーションで崩れ落ちる僕の耳に、なんともおっとりとした巫女さんの声が聞こえた。

 巫女さん、それは僕が一番聞きたい。

 巫女さんは、おもむろに『恋文』を取り上げた。

 ああ……、これでやっと僕の気持ちが伝わ―― 

「あ、達筆君、呪符書いてくれたの?
えいっ!」

 な、投げたーーーーー!?

 巫女さんは、殿の目の前に『恋文』を放り投げた。

 ぼ、僕の気持ち…………。

 霞みゆく意識の中、
「バナナーーーーーーっ!!」
 と、殿の悲痛なテノールボイスが聞こえた。