「あ、そうだ。巫女ちゃんにプレゼントがあるんだ」

「あら、何かしら」

「ちょっと待っててもらえるかい?」

 次の瞬間、僕は、いや、全米が驚愕した。

 殿が例のピタピタスーツの前ファスナー(なぜかオコジョ付き)を一気に引き下ろしだ。そして、殿は何を思ったか、そのエキセントリックな衣装を脱ぎ始めた。

 春の夕暮れの下、均整の取れたボディーが姿を現した。

「はい、ミョウガ」

 殿は、野良猫さえ振り返りそうな笑顔で、その脱ぎたてホヤホヤの衣装を巫女さんの腕に抱えさせた。激しいスキップでだいぶ減ったミョウガが、巫女さんの細い腕からだらしなく垂れ下がっている。

 た、確かにミョウガですが。巫女さんは好きだといいましたが……。

 その衣装いらねえぇぇぇぇ!!
 ミョウガより、その衣装の方が体積大きいだろ!!

 あ。驚きのあまり、言葉が汚くなってしまった。これは失敬。

「あらほんと、ミョウガだわ。ありがとう」

 ありがとうって巫女さん……。巫女さんの美しい微笑みに、照る夕陽が絶妙なコントラストを飾る。

 巫女さんはその笑顔のまま、後ろに片手を回し……え? ハサミ?
 後ろに回した手には、ハサミが握られていた。 

 ジョキ、ジョキ、ジョキ。
 巫女さんは、間髪いれず、更に言うなら何の躊躇もなく、先端にミョウガがくくられている彩色豊かなヒモを切り始めた。

「ふう。さて、中に入りましょうか」

 右手にヒモ、左手にオーロラスーツを持った巫女さんは、呆気にとられる僕ににこやかに言いはなった。

 巫女さんは、くるりと半回転して歩き出す。

 途中、左側に置いてあった大きいくずかごに、左手にもっていたものをバサリといれたのを僕は見逃さなかった。

 しかし、殿、そのレスリングの選手が着用するような衣装は、なんなんですか?