どっちの愛も、重すぎて息ができない。

「俺と、帰るよね?」
笑っているけど、その笑顔はどうしても笑っているように見えない。


「え、あ、でも、」


「"でも"じゃない」

ぐい、と強く腕を掴まれる。
奏多の手は腕を完全に包み込んでいて

とてもじゃないけど、逃げられない。


「俺、言ったよね。他の男と一緒に帰るなって。」

耳元に落ちる少しだけ甘い声。
その声に思わず身体が(すく)

「奏多…そんな言い方しな…っ、」

「俺、本気なんだわ。莉奈を誰にも渡したくない。」

掴む力がより一層強くなる。