どっちの愛も、重すぎて息ができない。

「泣かないで……俺がいるよ。」

湊の低い声。頬に触れる優しい指先
その温かさに胸がじんわりと熱くなる。


だけど、

『莉奈』

背筋が凍る。振り返ると教室の扉にもたれ掛かる奏多が立っていた。

笑顔なんてどこにもない、ただ私たちを真っ直ぐにみている。


「奏多……っ、違…「へえ。」

私の言葉を遮って奏多が口を開いた。
低くて鋭い声。

奏多がゆっくりと歩いてくる。
「莉奈のことそんな顔に出来るんだな。湊。」


「……っ」湊は表情を崩さずに奏多を見つめる。