湊の目は幼馴染に向ける目なんかじゃない。

あいつは莉奈にあの時を思い出させようとしている。

思い出せちゃいけない。



だって莉奈が全部思い出してしまったら、
ドクンと胸が痛くなった。

脳裏に浮かぶのはあの時の光景
泣きじゃくる莉奈を抱きしめて必死に
『忘れろ』って言った自分。

約束したのは湊じゃない。莉奈を助けたのは俺だ。

机の下で拳を強く握った。
誰にも渡さない。
過去なんて思い出させてたまるか、

莉奈の記憶も、笑顔も、未来も──全部俺のだから、誰かになんて渡してやらない。