湊はゆっくり息を吐いて、私の頬に優しく触れる。

「莉奈は覚えていないんだね」

「へ?」

「小さい時、お前俺に言ってくれたんだよ
『大きくなってもずっと一緒にいて』って」

心臓が異常に跳ねる。
そんな記憶は……全く無いのだ。

「俺はその言葉を忘れたことないよ。だからこうして戻ってきた。」

そういえば、保育園の頃、湊はお家の都合で
転園したんだっけ。


「……ずっと、一緒に……、?」

私の中で走馬灯のように何かが蘇った

夕暮れの公園。
泣きじゃくる私。
誰かが私の手を優しく握ってくれている。

でもその人の顔だけが浮かんでこない。

「莉奈。莉奈……」湊が優しくてどこか甘い声で私の名前を呼ぶ。

「……俺から離れていかないで……、」

細く、悲しそうに湊が口を開く。