どっちの愛も、重すぎて息ができない。

「俺は、姫を愛している。」

この台詞もアドリブ。台本には書いていない。

「…っ!?」

奏多の声が近づいてきて、一瞬で視界が塞がれた。

その"キス"は甘くて、苦しくて、心臓が破裂してしまいそうなキスだった。

こんなの台本にない…!!

幕が閉じると観客席の方から大きな拍手が響いた。

袖に引きずり込まれると湊が立っていた。

表情は笑っているのだけれど。瞳はすごく鋭かった。

「大胆だな?奏多。」

「演出だよ。客も盛り上がったし。結果オーライ。」

奏多は衣装の羽織を脱ぎながら涼しい顔で答える。