不意に腕を掴まれて振り返ると奏多がいた

「な、なんで奏多が、」

「助っ人…。最近休んでいる人いるんでしょ。てか、さっきから立ち話ばっかだね」


「え、?」

「準備が遅れるんだけど。」

柔らかく笑っているのに声ものすごく低い。

「ご、ごめん、なさい。」
「湊…お前も無駄話ばっかしてないで手を動かして。」

どこか睨みつけるような鋭い視線。
湊は挑発しながら口角を上げる

「別に無駄話じゃないけど。莉奈にとって大事な記憶。」

その言葉が深く胸に突き刺さる。


大事な記憶…?…じゃあその記憶をどうして私が覚えていないの?

なんで、誰も教えてくれないの?


賑やかな教室の中で私だけが息苦しい思いをしていた。