ろくな死に方しねぇから

 注目を浴びている律輝は、依澄には何も返さずに顔を背けた。決して仲の良い関係ではない。照れ笑いのような真似をするつもりもない。興味を持たれる筋合いもない。

「うわ、めっちゃ無視じゃん」

「流石に宮間くんがかわいそすぎる」

「何でもいいから喋ればいいのにね」

「喋れないんでしょ。口はただの飾り」

 依澄派の女子たちが口々に律輝を非難する。律輝はその全てをスルーした。好きに言わせておけばいい。相手をするだけ労力の無駄だ。口答えしたところで火に油を注ぐようなものだ。笑顔の仮面を貼り付けている依澄にも、嘘塗れの依澄の味方であるその他のクラスメートにも、媚び諂うつもりはない。

「何これ、空気悪すぎね?」

「蓑島のせいだろ。無視するとか感じ悪い」

「なんか蓑島って、裏で人を喰い殺してそうじゃない?」

「ああ、確かに。例の人喰いヴァンパイアだったら通報しないといけないな」

 話題があらぬ方向へ逸れていく。不満の延長線上に乗っている。誰も軌道修正しようとしない。疑いをかけられた律輝を庇おうともしない。好き勝手言われている律輝本人も、未だ口を開こうとはしない。ただ冷静に、自分は人を喰い殺しているように見えるのか、と分析していた。喰ってはいないが、殺しているのは間違いなかった。

 誰からも好かれ慕われ信頼されている依澄は完璧に擬態ができている。誰も依澄が人喰いヴァンパイアだとは思っていない。この場にいる多くの人間が律輝を忌避し、猜疑の目を向けている状態で、依澄が人を喰っているという事実を述べても信じてはもらえないだろう。ヘイトを増幅させるだけである。律輝は否定も肯定もせず、沈黙し続けるのを選んだ。現時点で律輝の敵は依澄のみで、依澄以外の人間は、一生懸命威嚇をしているが全く怖くない小動物と同じようなものであった。