ろくな死に方しねぇから

 にこりと表情を緩める依澄と睨み合う。二人の醸し出す剣呑な雰囲気に割って入る人はいないが、近くの人同士で顔を寄せ合い、何やら小声で話している姿は散見された。

 律輝か依澄か、どちらかが引かなければ、物々しい空気は消え去らない。大抵騒がしいはずの昼休みが、嵐の前の静けさのように不穏で排他的な状況となっていた。このクラスだけがそうだった。紛れもなく、火花を散らしている律輝と依澄のせいだった。

「喰べたいんだ。人間を喰べたいってことは、宮間が噂の人喰いヴァンパイア?」

「言いがかりだね。もしかしたら性的な意味の喰べたいかもしれないのに」

「俺のことをそんな目で見たことなんかないくせによく言うよ」

「それは隠してきたからだよ。性的な目で見てることに気づかれたら気持ち悪がられると思って」

「悪いけど、もう俺は宮間のことを気持ち悪いと思ってる。それこそ、殺してしまいたいくらい」

 律輝も依澄も、顔はいつも通りだが確実に殺気立っていた。喰べてしまいたいくらい、殺してしまいたいくらい、互いのことを嫌厭している。警戒している。敵だと見做している。先に相手の命を狩らなければ殺される。律輝は依澄に。依澄は律輝に。

 煽り合って口喧嘩をする二人の関係は、一触即発の状態だった。周りに人がいなければ殺し合っていたかもしれない。実際、場所が変わればそのような事態に陥ってしまうだろう。

 律輝は依澄を殺す役割がある。依澄が簡単に殺させてくれるような相手ではないことも分かりきっている。依澄との殺し合いは避けては通れない。無傷なままでいられるとも思えない。油断も、過信も、依澄の前では命取りとなる。