ろくな死に方しねぇから

 律輝は孤立しているが、決してクラスメートからそうさせられているわけではない。望んで一人を選んでいるのだ。誰とも連もうとせず、その上話しかけても愛想のない冷たい返答しかしない律輝をよく思わない人は多いが、そうではない人もいる。でなければ、依澄派か律輝派か、といった些細な論争など起こるはずがなかった。

 なかなか止まらなかった咳がようやく落ち着いたところで、律輝は深呼吸をして唾を飲み込んだ。もう大丈夫そうである。改めてペットボトルに口をつけ、今度は意識してゆっくりと水を飲んだ。

「蓑島、また無視は寂しいよ。心配してるのに」

 依澄が蓑島と呼ぶ度、教室に緊迫した空気が流れているような気がした。固唾を呑んで二人のやりとりを見守るクラスメートの目に晒されながら、律輝はペットボトルの蓋を閉めた。

「心配してたんだ。胡散臭くて信じられなかった」

 その瞬間、周囲で響めきが広がった。挑発でも何でも、突拍子もなく何かしらの言葉を発した律輝に対してだった。無視を指摘されても、それすらも無視をすると思われていたのかもしれない。

 律輝は滅多に口を開かない寡黙な男であるため、ふとした時に喋ると珍しがられることがある。しかしながら、対抗する依澄は意に介さず、律輝の挑発を挑発で返した。冷静な者同士の口論が勃発する。

「やっと喋ってくれたと思ったら、些か毒塗れの言葉だね。触ると炎症を引き起こす植物みたい」

「宮間の興味のある人が貶されたら、自分まで貶されてるような気分になるんじゃなかったっけ」

「言ったね、そんなこと。覚えててくれたんだ。見かけによらず優しいね。もっと興味が湧いたよ」

「全く嬉しくない。現在進行形で欺瞞に満ちた言動を取ってる詐欺師みたいな宮間に興味持たれても」

「俺、凄く嫌われてるね。でも俺は蓑島のこと気に入ってるよ。それこそ、喰べてしまいたいくらい」