「大丈夫? 蓑島」
無視してくれればいいものを、噎せていることに目敏く気づいた依澄が声をかけてくる。こちらにはっきりと届くような声量であるため、それまで誰も視界に入れていなかった自分にいくつもの目が向くのが分かった。朝と似た嫌な流れだ。咳き込みながら、律輝は依澄を睨みつけてしまいそうになる。これで空気が悪くなったことを依澄は忘れているのだろうか。現に、依澄以外のクラスメートは、朝のいざこざを思い出したかのように遠慮がちで気まずそうな目を律輝に向けていた。本人に直接文句を飛ばした人たちに至っては、罪悪感でも抱いているのかもしれない。
咳き込んでいる間、何を言うでもなくちらちらと必要以上に見られた。注目されるのは好きではない。噎せている姿など見られたいとは思わない。大丈夫かと尋ねてきた依澄も本気で心配しているようには見えない。心配しているふりだ。クラスで浮いている人のことも気にかけているふりだ。好感度アップに利用されている。誰に対しても平等で、優しい人間であろうとしている。そのような人間が、人を喰い殺すヴァンパイアだと誰が思うのか。全員騙されているのだ。依澄の笑顔に。依澄の言葉に。まるで教祖と信者のようである。気持ち悪い関係だ。気持ち悪いヴァンパイアだ。
「あれ、地味に苦しいよな」
「たまにあるよね。変なところ入っちゃう時」
「蓑島くんが苦しそうなの初めて見たかも」
「蓑島も人間なんだな」
「お前蓑島を何だと思ってたんだよ」
こそこそと話す声がどこからか聞こえた。共感や興味、律輝に対する新たな発見などが混じっていた。律輝を貶すようなマイナスな言葉ではなかった。
無視してくれればいいものを、噎せていることに目敏く気づいた依澄が声をかけてくる。こちらにはっきりと届くような声量であるため、それまで誰も視界に入れていなかった自分にいくつもの目が向くのが分かった。朝と似た嫌な流れだ。咳き込みながら、律輝は依澄を睨みつけてしまいそうになる。これで空気が悪くなったことを依澄は忘れているのだろうか。現に、依澄以外のクラスメートは、朝のいざこざを思い出したかのように遠慮がちで気まずそうな目を律輝に向けていた。本人に直接文句を飛ばした人たちに至っては、罪悪感でも抱いているのかもしれない。
咳き込んでいる間、何を言うでもなくちらちらと必要以上に見られた。注目されるのは好きではない。噎せている姿など見られたいとは思わない。大丈夫かと尋ねてきた依澄も本気で心配しているようには見えない。心配しているふりだ。クラスで浮いている人のことも気にかけているふりだ。好感度アップに利用されている。誰に対しても平等で、優しい人間であろうとしている。そのような人間が、人を喰い殺すヴァンパイアだと誰が思うのか。全員騙されているのだ。依澄の笑顔に。依澄の言葉に。まるで教祖と信者のようである。気持ち悪い関係だ。気持ち悪いヴァンパイアだ。
「あれ、地味に苦しいよな」
「たまにあるよね。変なところ入っちゃう時」
「蓑島くんが苦しそうなの初めて見たかも」
「蓑島も人間なんだな」
「お前蓑島を何だと思ってたんだよ」
こそこそと話す声がどこからか聞こえた。共感や興味、律輝に対する新たな発見などが混じっていた。律輝を貶すようなマイナスな言葉ではなかった。



