涼ちゃんが俺の方を一切見ずに、すっと通り過ぎていった。
まるで、俺なんて存在してないみたいに。
「晴人、あの子めちゃくちゃ通り過ぎてったけど…」
大智が驚いた声を出す。
大智の言葉に、俺は思わず目を見開いた。
びっくりした。
こんなに俺に興味ない子、 初めてだったから。
他の女子は、俺を見れば話しかけてくる。
「かっこいいですね」 「写真撮ってもいいですか?」 「彼女いるんですか?」
そんな言葉、もう聞き飽きてた。
でも涼ちゃんは、違った。
購買でも、階段でも、すれ違っても、
俺と目を合わせようとしない。
まるで、俺なんて存在してないみたいに。
それが、なんか悔しくて、なんか気になって。
近くで涼ちゃんを見ると、やっぱり綺麗な子だった。
黒髪がさらっと揺れて、瞳はまっすぐで、笑ってる顔は見たことないけど、きっと綺麗なんだろうなって思った。
涼ちゃんは、俺と住むこと知ってるのかな。
知ってたら、どんな顔するんだろ。
嫌がるかな。
驚くかな。
…なんて考えてる自分に気づいて、ちょっとだけ笑った。
気づいたら、同居が楽しみになっていた。



