「じゃあ、彼女になる?」
その言葉が、 夜の空気を一瞬で変えた。
「は?」
今、なんて言った?
聞き間違い? 冗談? それとも――本気?
頭がぐるぐるして、 心臓がバクバクして、 でも、口から出た言葉は違った。
「私のこと、なんだと思ってるんですか」
「え?」
「馬鹿にしないでください!」
気づいたら、走り出してた。
浴衣の裾が揺れて、
下駄の音が乱れて、
夜の風が冷たく感じた。
自分でも、なんで怒ったのか分からなかった。
先輩に“妹”として大事にされてるのは、 本当に嬉しかった。
誰よりも近くにいてくれて、誰よりも優しくしてくれて、それだけで十分だったはずなのに。
でも――
“彼女になる?”って言葉が、 軽く聞こえた。
先輩の周りにいる女の子たちと、 同じように扱われた気がして。



