家に帰ると、
玄関で待っていたお母さんに、いきなり怒られた。
「なんで勝手に出ていったの!」
びくっとして、言葉が出なかった。
…ごめんなさい。
でも、どうしても外に出たかった。
少しだけ、気持ちを落ち着けたかった。
「晴人くんが、涼のこと心配して走って行ったのよ」
その言葉に、 胸がぎゅっとなった。
…え。
先輩が? 私のこと、心配して?
お風呂上がりだったのに? 髪も濡れたままで?
あの夜道で、 私の腕を掴んだおじさんに、
本気で怒ってくれたのは、 私のことを守ろうとしてくれたからだったんだ。
…知らなかった。 そんなふうに、思ってくれてたなんて。
涙が、またあふれてきた。
さっきまで泣いてたのに、
もう泣き止んだはずなのに、またぽろぽろとこぼれてくる。
先輩の優しさが、 静かに胸に染みていく。
「ごめんなさい…」
誰に向けた言葉か分からないまま、 私は小さくつぶやいた。



