「中二で初めて彼女ができたけど、 浮気されて振られた。 母さんみたいな女ばっかなのかなと思ったら、 もうどうでもよくなって。俺、空っぽだから」
私は、何も言えなかった。
言葉が、出てこなかった。
胸が、ぎゅっと締めつけられて、喉がつまって、ただ、先輩の横顔を見つめることしかできなかった。
…知らなかった。
先輩が、こんなにも辛い思いをしてきたなんて。
私が考えてたよりも、 何倍も、何十倍も。
“女遊び”なんて言葉で片付けられるような、そんな軽いものじゃなかった。
先輩は、 誰にも信じられなくなって、誰にも期待しなくなって
それでも、笑っていた。
「ごめん、そんな顔させるつもりはなかった。 やめよう、この話」
先輩は、そう言って笑った。
でも――
その笑顔は、やっぱり目が笑っていなかった。
ずっと思ってた。 なんでこんな笑い方するんだろうって。
口元は笑ってるのに、 目は、どこか遠くを見てるみたいで。
まるで、心に壁があるみたいだった。



