その笑顔は、いつものように口元だけで、 目は、笑っていなかった。
…なんで。 なんでそんな風に笑うの。
「先輩は、なんでそんなことしてたんですか?」
私は、ずっと聞けなかったことを、ようやく口にした。
先輩は、ふっと目を伏せた。
悲しい目だった。
まるで、何かを思い出しているような、 遠くを見ているような目。
「聞きたい?」
先輩がそう言ったとき、 その表情は、苦しそうだった。
眉が少しだけ寄っていて、 目は、どこか遠くを見ていた。
…聞いちゃダメな気がした。
この人は、今まで誰にも言えなかったことを私に話そうとしてる。
それが、どれだけ重いことなのか。
どれだけ痛い記憶なのか。
なんとなく、分かってしまった。
だから、私は一瞬、言葉を飲み込んだ。
でも――
それじゃ、何も変わらない。
このまま、優しさに甘えて、 何も知らないままでいたら、 きっとまたすれ違ってしまう。
私は、先輩のことを知りたい。



