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朝、目が覚めた。いつも通り、ぼんやりした頭で洗面所へ向かう。
扉を開けた瞬間――
「……っ!」
そこには、髪を濡らしたままの先輩が立っていた。
白いシャツが少し透けてて、思わず目をそらす。
「ご、ごめんなさいっ!」
慌てて扉を閉める。 心臓がバクバクしてる。
そうだ。昨日から、先輩との同居が始まったんだった。
忘れてたなんて、ありえない。
こんな毎日が続くの?
扉の向こうから、優しい声が聞こえた。
「涼ちゃん、ごめんね。先使っていいよ」
……名前、呼ばれた。
しかも、あの落ち着いた声で。
心臓がまた跳ねる。
「は、はいっ!すぐ終わらせます!」
顔が熱い。絶対、赤くなってる。 鏡なんて見てられない。
歯磨きも洗顔も、いつもの倍速。 ドライヤーなんて、風だけ当てて終了。
そして、朝ごはんも食べずに玄関を飛び出した。


