次に、お母さんに向かって言った。
「お母さんの分も、タッパーじゃなくて弁当箱買ってこようと思って」
でも、お母さんは首を横に振って、「今のままでいいよ」 と、笑って言った。
出かける準備をしていると、由紀人さんがそっと封筒を差し出してきた。
「これ、今日の買い物に使って。好きなの選んでいいよ」
「えっ…ありがとうございます」
私は、少し驚きながらも受け取った。 由紀人さんのこういうところ、本当に優しい。
そのとき、階段の方から足音が聞こえた。
先輩が起きてきた。
私は準備を終えて、玄関で待っていた。
すると、先輩がゆっくり近づいてくる。
…私服。
初めて見る先輩の私服姿に、思わず目が止まった。
シンプルなのに、なんか似合ってる。
…顔だけはいい。顔だけは!
心の中で全力で否定しながらも、 ドキッとしてしまった自分が悔しい。
「待たせた?」
って、先輩が軽く笑う。
「…別に」
私はそっけなく答えながら、 靴のつま先を見つめていた。



