立ち上がった瞬間—— 美冬さんに、手を握り締められた。
「え…」
その手は、強くて、冷たくて。
言葉よりも先に、ぞっとする感覚が走る。
「涼ちゃん、私に晴人返してくれない?」
「なっ…」
何言ってるの、この人!? そもそも、別れたのは——あなたのせいでしょ!?
先輩がどれだけ傷ついたか、私は知ってる。
あの時の表情も、言葉も、全部覚えてる。
だから、はっきり言った。
「晴人先輩は絶対にあなたのことなんか好きになりません」
その言葉に、迷いはなかった。
手を振りほどいて、まっすぐ歩き出す。
背中に視線を感じるけど、振り返らない。
あの人、おかしい。 もう、関わりたくない。


