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次の日。
学祭の準備で、教室はペンキの匂いに包まれていた。
刷毛を握って、段ボールに色を塗っていると—— 外から、聞き慣れた声が聞こえた。
「晴人、今年も優勝よろしくな!クラスの総合優勝がかかってる!」
チラッと窓の外を見ると、先輩が段ボールを運びながら友達に肩を組まれていた。
「大智に言えよ、それは」
「俺?無理に決まってんだろ」
軽い笑い声と、楽しそうなやりとり。
その中にいる先輩は、やっぱり“みんなの晴人先輩”だった。
……なんか、遠いな。
昨日の夜、あんなに近くにいたのに。
今は、ただの“後輩”として、窓越しに見てるだけ。
そう思った瞬間—— 先輩と、バチッと目が合った。
えっ……! 心臓が跳ねる。
すると、先輩がコンコンと窓を叩いた。
咄嗟に、窓を開ける。
風がふわっと教室に入り込んで、ペンキの匂いが少しだけ薄まった。



