「出たくないんですか?」



先輩の顔を見ながら、そっと聞いてみた。



「嫌だよ、あんなの。それに、涼ちゃんと学祭回れないじゃん」



——え?

一瞬、時が止まった気がした。 先輩の言葉が、胸の奥にじんわり染みていく。

先輩も、私と回りたいって思ってくれてたんだ。
それだけで、心がふわっと浮かんだ。
今日一日、モヤモヤしてた気持ちが一気に晴れていく。



でも——



「あ、でもそもそも隠してるから一緒に回れないのか」



先輩がぽつりとつぶやいた。



……そうだったーーー!!!

付き合ってること、隠してるんだった!!!
その事実が、頭の中で鐘みたいに鳴り響いた。

悔しい。 こんなに近くにいるのに、堂々と一緒にいられないなんて。
学祭で手をつないで歩くことも、写真を撮ることも、できないなんて。