シャワーからあがると、リビングには先輩がひとり。



「あれ?」



思わず声を出すと、先輩が振り向いた。



「旅行疲れたし、先寝るって」



どうやら、お母さんたちはもう部屋に戻ったらしい。

静かな部屋。 ふたりだけの空気。



「涼ちゃん、肩治った?」



肩……?

先輩に言われて、思い出した。

前に、先輩のことを好きな女子たちにやられたこと。

すっかり忘れていた。

でも、先輩は覚えてた。
何も言わなくても、気にしてくれてた。

その優しさが、胸にじんわり染みてくる。