「涼ちゃん…?」
背中越しに声をかけると、涼ちゃんの声が返ってきた。
「行くって、どこに行くんですか」
「…一人暮らししてる知り合いの家とか」
言いながら、なんとなく視線をそらした。
でも、涼ちゃんの次の言葉が、俺の動きを止めた。
「それって女性ですか」
「え?」
振り向くと、涼ちゃんが顔を真っ赤にして俺を見上げていた。
その目が、潤んでて、怒ってるようで、泣きそうで。
え、なにその顔。
「出てったら嫌です」
その言葉が、胸に突き刺さる。
でも、俺は苦笑するしかなかった。
「うーん…でも、好意がある男と同じ家はさすがに嫌でしょ」
ここで「嫌い」って言ってくれたら、楽になれるのに。
涼ちゃんが俺を拒絶してくれたら、全部終わるのに。



