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同居生活、3日目。
学校に来ても、まだ昨日の衝撃が抜けない。
昼休み。
教室でお弁当を広げながら、私はそっと話した。
「……昨日、お風呂入ろうとしたら、先輩が脱衣所に入ってきて」
「えっ!?えええ!?それって、見られたってこと!?」
花の声が、風よりも高く響いた。
「ちょっとだけ!ほんの一瞬!でも、ほんとに死ぬかと思った…!」
私は顔を手で覆う。 思い出すだけで、体温が上がる。
「やばいじゃんそれ!青春じゃん!てか、先輩どうだった?動揺してた?」
「全然。『ごめん』って軽く言って、すぐ出てった。あの人、ほんと無神経」
花は爆笑してる。
私は、笑えない。
「でもさ~、そんなハプニングって、距離縮まるチャンスじゃない?」
「縮まらなくていい。むしろ、もっと離れてほしい」
お弁当の卵焼きが、いつもより味しない。


